ムカシハナバチ属

この夏に近所の草原で採集したムカシハナバチ属の標本を調べている。

しかし、近年の知見を網羅したはずの『日本産ハナバチ図鑑』(2014年)には、ムカシハナバチ属の種はただの6種しか記載されていないし、さらに北海道で確認されているのは3種のみである。

件の標本(2♂)を実体顕微鏡でよく見てみると、マーラーエリアと呼ばれる複眼と大顎の間の部分がほとんど無いくらいに短いのだが、図鑑に記載されている6種の中に、このような形状が該当する種がみあたらない。ここで途方に暮れる。

ムカシハナバチ属の一種_2

世界に目を向けてみると、イギリスの大英博物館の学芸員にDr.Michael Kuhlmannさんという人がいて、ムカシハナバチ属を専門に研究されていることを知る。彼の論文によると、中国産が66種、中央アジア産が80種、シベリア産が26種、ロシア産が42種、それぞれ記載されているらしい。

これらのことから推察すると、本属の分布の中心は大陸にあるのかもしれない。しかし、日本ではまだ十分に調べられていないだけで、今後、北海道産の標本を沢山集めて、Kuhlmannさんの研究成果を参照しながらじっくりと検討すれば、日本産種はまだまだ増える可能性がありそうだ。結局、調べている人が少ない、ということなのだろう。

【追記】
大事なことを書き忘れたので、追記します。本文中には『日本産ハナバチ図鑑』に記載されているムカシハナバチ属の数が少ない、などと書きましたが、この図鑑の素晴らしさは何も変わりません。

先ず第一に、この図鑑が出版されなかったら、ハナバチを調べてみよう、という動機さえ生まれませんでした。それから、採集した個体がムカシハナバチ科に属し、さらにムカシハナバチ属に属する、というところまで自力で知ることはありませんでした。また、属の中の種の識別点が、こんなにも細かい形質に頼らなくてはならないことなど、知りませんでした。マラーエリア(磨縁部(まえんぶ))などの形質を意識するようになったのも、本図鑑や『日本産マルハナバチ図鑑』で勉強させてもらったからです。

ただ、日本のハナバチ類の分類学的研究が、イギリスやヨーロッパ、ロシアと歴史的な差があるのは事実のようです。それを実感できたのも、本図鑑を介してハナバチに接し始めたからなのですが…。

大陸の動植物相と北海道のそれは密接な関係をもっています。極東ロシア・韓国・中国のそれらと、どれくらい同じで、どれくらい違うのか。同種なのか、亜種なのか、別種なのか。北海道や日本ではどのような分布をしているのか。それはなぜなのか。そのような視点で生き物を見て行くと、まだまだ手つかずのオモロい研究材料がゴロゴロと転がっていることを実感します。

本図鑑の出版をきっかけに日本のハナバチ相に興味を持ち、調べる人が増えればよいな、と考えています。
プロフィール

桃姫の飼い主

Author:桃姫の飼い主
南極大陸を横断したグリーンランドハスキー犬『キンタ』を曾祖父に持つ由緒正しい駄犬『桃姫』とその飼い主が綴る、北の空の観天”呑気”

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宣言:「私は原子力を利用しない世界を求めます」

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