『垂直の記憶』(山野井泰史著、山と渓谷社)


垂直の記憶―岩と雪の7章垂直の記憶―岩と雪の7章
(2004/03/01)
山野井 泰史

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この人の生き様は、登山家という枠には収まらない。

ギャチュン・カンからの壮絶な脱出のあと、多くの手足の指を失った山野井夫妻。
世界のトップクライマーとして壮大な夢を追っていたが、指を失ったことで描けない夢となった。
ハイキングコースでも一般登山者に抜かれてしまう。初級者向きのボルダーが登れない。

そこで彼が取った態度は、どんな冒険よりも私の胸を踊らせる。

壮絶な葛藤があったと思う。初心者に戻ってしまった世界最強のクライマーだ。
それでも目の前には「今の自分」には登れない岩があって、それを何とか工夫して登れたときの
達成感が彼を昔の彼に蘇生させていく。

「岩を登っている感覚が好き。僕には登る意義など本当に関係ないのだ。」

好きなことがあるから、好きなことをやる。
それは「他人の評価」から最もかけ離れた世界。決して相対化されることのない世界。
しかし、それを実践することは、今の世の中ではとても困難なことだ。

山野井夫妻は奇跡の生還から5年、グリーンランドの巨大岩壁「オルカ」の登攀に成功する。
「NHKスペシャル」で二度観たが、「オルカ」を発見したときの、子供のようにはしゃぐ
山野井さんの歓声がとても印象的だった。ああ、この人は本当に山が、岩登りが好きなんだな。
それがストレートに伝わってくる、すばらしいドキュメンタリーだった。

自分が生きることは、目の前の、ちょっと前には登れなかった岩を登ること。
登らずにはいられない「岩」が見つかった人は、幸せな人だ。
プロフィール

桃姫の飼い主

Author:桃姫の飼い主
南極大陸を横断したグリーンランドハスキー犬『キンタ』を曾祖父に持つ由緒正しい駄犬『桃姫』とその飼い主が綴る、北の空の観天”呑気”

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宣言:「私は原子力を利用しない世界を求めます」

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