『恐竜を発見した男』(デニス・R・ディーン著、月川和雄訳)(1)

ギデオン・マンテル(1790-1852)の評伝である。19世紀前半にイギリスで活躍した
地質学者・古生物学者。


恐竜を発見した男―ギデオン・マンテル伝恐竜を発見した男―ギデオン・マンテル伝
(2000/12)
デニス・R. ディーン

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恐竜の化石を発見したにとどまらず、それを比較解剖学的・地質学的な研究に基づいて、
現世にはいない種類の爬虫類であることを明らかにしてきた人物。出自は靴屋の息子。
苦学して医者となり、医者を続けながら、古生物学の世界に冠たる大学者達と交流し、
影響を及ぼし、対立しながら、やがて時代を代表する学者になっていく、その過程が描
かれている。

彼を取り巻く登場人物が凄まじい。

・ジェームズ・ソワビー(1757-1822)  化石貝類学者
                    "The Mineral Conchology of Great Britain"
・ウィリアム・スミス(1769-1839)   英国地質学の父
・ジョルジュ・キュビィエ(1769-1832) フランスの偉大な古生物学者
・ジョージ・ベラス・グリーノウ(1778-1855) ロンドン地質学会初代会長
・ベンジャミン・シリマン(1779-1864) アメリカ地質学会創立者の一人
・ジョン・ハーシェル(1792-1871) 天文学者・ウィリアム・ハーシェルの息子
・チャールズ・ライエル(1797-1875)  『地質学原理』、斉一説提唱者
・リチャード・オーウェン(1804-1892) 比較解剖学・古生物学者、ギデオンの宿敵
・ルイ・アガシ(1807-1873)      スイスの魚類学者・古生物学者
ほか多数。

博物学の巨星達との交流が描かれているのだが、通り一遍の描写ではなく、ギデオンを通
して内面まで描かれているから面白い。何故このような記述ができたのか、というと、大
量の書簡が残されていたからであり、著者によって初めて詳細に検討されたという。謎に
包まれていたギデオンの生涯が明らかにされるとともに、周りの人間群像にも光が当てら
れ、結果として19世紀前半の博物学全般を俯瞰することもできる本になっている。

訳文は少し読みづらかった。おそらく原文に忠実に訳そうとされた結果、そうなってしま
ったんだろうと想像するが、特に主語として”ギデオン”と”マンテル”が交互に使われるのに
は戸惑った。また、引用箇所の末尾に()付きでページが明記されているのだが、それは本
文のページとは無関係であり、原著のページと思われる。原著を読まない可能性の高い読者
には省略した方が読みやすかったかもしれない。

とまれ、比較解剖学の用語が頻発する本書を日本語で読めるだけでもありがたい。訳者の月
川さんは本書を訳される前に、クリストファー マクガワン著の『恐竜解剖―動きと形のひみ
つ』も訳されている(1998/7)。マクガワンには好著『チキンの骨で恐竜を作ってみよう』がある。

月川さんは、西洋古典古代の本草学・博物学がご専門で、国立科学博物館でギリシャ語・ラ
テン語の講師も務められた方とのこと。同性愛にも造形が深く、南方熊楠の男色方面の著書
もあるという才人。残念ながら2008年に亡くなられている。

つづく
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桃姫の飼い主

Author:桃姫の飼い主
南極大陸を横断したグリーンランドハスキー犬『キンタ』を曾祖父に持つ由緒正しい駄犬『桃姫』とその飼い主が綴る、北の空の観天”呑気”

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宣言:「私は原子力を利用しない世界を求めます」

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